不妊検査/ Sterility Check

不妊検査

不妊原因をはっきりさせるための検査(不妊検査)

不妊治療の第一歩はまず妊娠を妨げている原因があるか、何が原因かを明らかにすることから始まります。
以下、検査項目とその詳細を説明します。

基礎体温(BBT)の測定

朝、目が覚めたら起きあがる前にベットの中で舌の下にデジタルあるいはアナログの婦人体温計を使って体温を測定し、婦人体温表に記入します。これを基礎体温といいます。

基礎体温(BBT)よりわかること

(1)ちゃんと排卵しているかどうか
(低温相→高温相→排卵あり)
(低温相だけ→排卵なし)
(2)排卵日はいつか(あとから振り返ると排卵日がわかる)
(3)高温期の期間より黄体機能が推定できる。

卵巣から卵が出た(排卵)の後に、卵巣の中に黄体が形成されます。
その黄体から黄体ホルモンという女性ホルモンが分泌され婦人体温が上昇します(高温相)。
高温相の期間はおおよそ14~16日間です。
この期間が12日以下と短い場合は黄体機能の不全が推定されます。
このような例では子宮内膜が不良で卵が子宮内膜に付きにくい着床障害になります。

内分泌検査(ホルモン測定)

不妊症の一次スクリーニング検査として、性腺刺激ホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)と卵巣から分泌される卵胞ホルモン(Estradiol(E2))、さらに排卵した後の黄体から分泌される黄体ホルモン(Progesterone(P4))の測定が挙げられます。

(1)月経3日目頃のLH、FSH、E2
ホルモン測定の意義は一つに卵巣の機能(予備能)を知ることにあります。
そのため月経開始3日目頃にLH、FSH、E2を測定します。
この頃のFSHが10miu/ml以上であると卵巣機能低下が疑われます。またこの頃のE2が70pg/ml以上では同じく卵巣予備能低下が疑われます。

(2)排卵後7日目前後のProgesterone(P4)
排卵した後は卵巣から黄体ホルモン(プロゲステロンP4)が分泌されます。これは子宮内膜に作用し内膜が卵を受け入れやすくする(着床)作用をもっています。P4が低いと着床が妨げられることがあります(黄体機能不全)。

(3)その他のホルモン(プロラクチン、男性ホルモン、甲状腺ホルモン)
月経不順や排卵がうまくいっていない(排卵障害)患者様では乳汁を分泌させる作用のあるプロラクチン(PRL)を測定します。
また、多のう胞性卵巣PCOS(後に詳述)では男性ホルモンT(フリーテストステロンなど)を測定します。
また甲状腺機能に問題がありそうなら甲状腺ホルモン(TSH、FT4、FT3)を測定します。
いずれのホルモン測定も1回の採血でできます。

ホルモン測定の内容とタイミング

(4)AMH(抗ミュラー管ホルモン)
AMHは、思春期の頃より卵巣内の前胞状卵胞と小胞状卵胞(いずれも卵を含んだ卵胞の源)から分泌されます。
加齢とともに減少していくので、いわゆる卵巣年齢の一つの指標としての測定をする意義があります。
すなわちAMHは、卵巣がどのくらい余力の機能を持っているのかといった卵巣予備能を知るためのマーカーとして有用です。
特に体外受精などの補助生殖医療(ART)に際し、AMHの測定により卵巣予備能をあらかじめ知ることは、本番の時の卵巣刺激法を選択するうえで有用です。
仮にAMHがその人の年齢相当より低値であるとしてもその方が即、妊娠しにくいということを意味しているというわけではありません。

参考資料(JISARTより)

年齢別平均AMH

子宮卵管造影法(HSG)

卵管が正常に疎通しているかどうかを検査する方法です。
その他、通気法などがありますが、子宮腔の形を把握できるという利点もあり、子宮卵管造影法の方が優れています。
通常、月経終了後から排卵するまでの間の期間に行います。子宮腔にリピオドールなどの造影剤を5~10cc注入し、子宮腔の形、卵管を造影します。
これに要する時間は通常5~6分間であり、世間でいわれている程痛いものではありません。
HSG後にしばしば自然妊娠が起こるのでこれは単なる不妊検査ではなく治療効果も期待できます。

精子検査

2日以上7日以内の禁欲の後、マスターベーション法にて精液を容器に採取します。
採取した検体はできましたら37度に保温した状態で運搬することが好ましいといえます。
採取20~30分後液化した頃、精子検査をします。

精液検査の基準値(WHOマニュアル2010年より)
<精液の正常範囲>

精液量
精子濃度
総精子数
運動率
正常形態率
総運動精子数

1.5ml 以上
1,500万/ml 以上
3,900万/ml 以上
40%以上
4%以上(奇形率96%未満)
1,560万/ml 以上

精子の状態は同一人であっても測定ごとにかなりの変動をすることが多いので、1回目の検査結果が不良であった場合は複数回検査を必要とします。
3ヶ月以内に2回実施し、2回の場合はその平均値、3回以上の場合はその中央値を採用します。

超音波検査

不妊検査において超音波検査はなくてはならない検査法です。通常腟内に超音波のプローブを入れ(経腟エコー)、リアルタイムに子宮、卵巣を把握します。

<超音波検査によってわかること>

子宮

・子宮筋腫の有無、場所、大きさなど
・子宮腺筋症の有無
・子宮内膜の厚さなど

卵巣

・卵胞(卵の入った袋)の大きさ (卵胞発育モニタリング)
→排卵時期の予想
・卵巣内子宮内膜症(チョコレートのう腫)の有無 など

卵管 ・卵管水腫の有無 など
子宮頚管因子検査(フーナー試験)

子宮の下部、ちょうど人の頭が子宮体部とすれば人の首に相当する部分を子宮頚部といいます。頚部の内側には頚管腺といって粘液を分泌する組織があります。排卵に近づくとこの頚管粘液が増え、粘調性も下がり水っぽくなります。また色も透明になり、精子が泳いで子宮の中に上昇しやすくなります。
フーナー試験とは排卵日あるいはその前日頃、通常の性交をもち粘液の中を精子がどのくらい前進運動しているかを観察する方法です。ですから性交後試験とも言います。

このフーナー試験が良好であれば頚管粘液と精子は適合している(抗精子抗体などない)といえます。
逆に不良の場合は

  • (1)検査した時がたまたま不良であった。
  • (後日もう1回検査をしたらとてもよかったということがよくあります)
  • (2)精子そのものに問題がある可能性
  • (3)頚管粘液が不良の場合
  • (4)検査した時期が排卵日あるいはその周辺とズレている場合(可能性)。


このようなことからフーナー試験が陰性の場合は1回でその結果を判断せず、翌月に再検査することが肝要です。

その他の検査

・抗精子抗体(Antisperm antibody(ASA)5,500円 ※自費診療になります
性交後試験が陰性の場合や明らかな不妊原因がないなどの場合。1回採血。

・腹腔鏡による骨盤内観察(必要な場合のみ)

以下に不妊検査を実施するタイミングを図示します。

不妊検査スケジュール

不妊症検査項目とそのタイミング

(1)精液検査
(2)抗精子抗体検査(随時)
(3)クラミジア抗体検査
(4)婦人体温計測(常時)

不妊治療を進めていくために必要なスクリーニング検査

治療を円滑に進めていくために、不妊治療を受診する患者様全員に初診時に次のような「スクリーニング検査(検査料:税別7,000円)」を行います。

血液検査※1回の採血です

・感染症(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)
・血液型(ABO型、Rh)

血圧測定