生殖補助医療(ART)とは?

生殖補助医療(ART)とは、体外で卵や胚を操作し、この胚を使い妊娠に結びつける方法です。 これには大きくわけ3つの方法があります。

ARTの3本柱

わが国のARTの現状

1978年イギリスで世界初の体外受精児妊娠のLouise Brownさんが誕生しました。わが国では1983年に体外受精に成功しております。それ以降、年々その数は右肩上がりに増加しています。 体外受精、顕微授精、凍結胚移植周期を合計すると、約45万件に達します。世界でも有数体外受精大国になっています。 また妊娠成功率も向上しており、いまや生まれてくる子の約5%がARTによって妊娠し出生していると考えられております。

ARTにより生まれてくる児の異常は増加しないのか?

各医療機関は妊娠率に加え、生まれた児の状況を報告する義務があります。
分娩様式、性別、体重、先天異常の有無などです。
それらの結果を集計したものが図 です。
横軸は母体年齢、縦軸は先天異常の割合です。(青バーIVFは体外授精で生まれた児、赤バーは顕微授精、グリーンバーは凍結移植です)

先天異常率

このグラフから分かるように30歳前半まではどの方法も1.3~1.5%と各方法に差はありません。また自然妊娠で生まれてくる児とも差はありません。
しかし30歳代後半になると1.5~1.9%とやや上昇し、40歳を超えると2.1~3.5%と明らかに上昇します。
しかしこれは自然妊娠でも同じ傾向をたどります。流産の原因と同様、胚の染色体異常の増加によることが原因です。
以上を要約すると現在までのところ、自然妊娠と比較しARTで先天性異常児の割合が増えるとは言えないと考えられています。このことは日本に限らず世界的なレベルでの共通の認識といって良いでしょう。

ART実施に伴う費用、助成金について

1.費用

体外授精、顕微授精などは健康保険が適用されないため高額医療となります。
当院で排卵刺激を行った場合、1周期あたり概ね40~50万円要します。ただし、注射の種類、量、あるいは回数などにより個人差があります。
個々の処置、治療についての料金の詳細についてはホームページ内の『不妊治療費』の項目に記載されております。
https://www.kusuhara-womens.jp/exp/
ご参考にしてください。

2.助成金

厚生労働省は「特定不妊治療助成事業」を行っております。
つまりARTを行った場合は一定の額で助成金が支給されます。
「採卵→胚凍結→胚移植」の一連の治療が終了した時点で申請できます。申請書類は各自治体のホームページからダウンロードし記入の上、クリニックに提出してください。不明な点は窓口で相談してください。
しかし夫婦合わせた年間所得の制限があります。東京都では2019年4月より905万円が上限とされています。

反復着床障害

1.反復着床障害とは何か?

40歳未満では良好な胚盤胞を移植すると1回あたり40~45%が着床します。
しかし良好胚を3回以上移植しても妊娠しない場合を反復着床障害と言います。
胚の側の問題だけではなく、子宮側、子宮内膜に問題があることも考えられます。

2.着床障害の原因

主な着床障害の原因には①子宮内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫 ②慢性子宮内膜炎 ③子宮内膜の機能異常が挙げられます。以下各項目について診断と治療法を解説します。

子宮内膜ポリープの診断と治療

①子宮内膜ポリープの診断

月経終了直後に経腟超音で子宮を観察すると、子宮腔内も突出したイボ状の陰影が見えます。ここで内膜ポリープを疑った場合は、さらにソノヒステログラフィーという方法で確定診断が可能です。
子宮腔内に生理食塩水を5~7cc注入して子宮腔を膨らませ経腟エコーで観察すると、内膜ポリープが生理食塩水の中に浮き出てきます。
最終的には子宮鏡を子宮腔内に入れ、直接観察できます。

②子宮内膜ポリープの治療

通常月経終了後の早い時期に行います。
細い光ファイバースコープを外子宮口から挿入し、同時生理食塩水を子宮腔に注入し、子宮腔を膨らませポリープを確認し、極細のループ状のリングでポリープを切除(捻断)できます。
子宮鏡は当クリニックでも実施しております。

慢性子宮内膜炎(Chronic Endometritis(CE))

①CEの診断

子宮内膜が慢性的に炎症をおこしている状態を慢性子宮内膜炎CEと呼びます。
この場合自覚症状を伴わない事が殆どです。
子宮内膜がこのようにCEであると着床を障害することが最近分かってきました。診断には子宮鏡を用い、子宮内膜を観察することで可能です。
CEでは子宮鏡でみて子宮内膜が発赤し、浮腫状であることが特徴です。

②CEの治療

抗生物質(ドキシサイクリン 薬品名 )を14日間内服します。

子宮内膜着床機能検査 ERA(Endometrial Receptivity Analysis)

①ERA(子宮内膜着床機能検査)とは?

子宮内膜はある一定の期間のみ胚が着床できる環境になります。この一定の期間のことを着床の窓(Implantation Window)と呼びます。
このImplantation Window(IW)の時期、長さは個人差があります。
反復着床障害の人の中にはIWが通常よりズレている事があり、それを調べる事によりIWの開いている着床に最も適した時期に移植を行なおうとする検査がERAです。

②EMMA (子宮内マイクロバイオーム検査)とは?

子宮内腔の細菌の種類と量を測定し、バランスが正常か否かを調べます。
また子宮内膜の乳酸菌の割合はその後の着床、妊娠率に影響を及ぼすとされています。

③ALICE (慢性子宮内膜炎)とは?

慢性子宮内膜炎(CE)が着床障害の原因になることは先に述べましたが、ALICEはその原因菌を調べる事により、それを治すための最も適した抗生物質を選択することができます。

種類 目的 重要度
1.ERA 胚移植日に着床の窓(implatation window)が開いているかどうか?
2.EMMA 子宮内腔の細菌が着床を障害していないかどうか?
3.ALICE 慢性子宮内膜炎がないかどうか?
ERA、EMMA、ALICEの具体的な方法

①ERA、EMMA、ALICEとも一回行う事ができます。

②検査時期

既に良好胚移植で行った時と同じホルモン補充投与を行ないます。そして前回移植した時期と同一の日に子宮内膜を採取します。

③子宮内膜採取法

細いカニューレを子宮腔内に挿入し、吸引すると子宮内膜が吸い取られて採取できます。
これに要する時間は5分位で、大きな痛みも伴いません。麻酔も必要ありません。

④検査

検体はスペインのバレンシアに輸送され本法の特許をもつIgenomix本社で検査されます。
検査結果は2週間後に分かります。