不妊治療成績/ Data

妊娠に結び付いた治療法の分析

当院は2014年4月に開院、診療を始め、2017年3月でちょうど3年になりました。
その間、妊娠された方は690名です。これは、不妊治療をした患者様の約60%に相当します。つまり10人の不妊患者様のうち6人は妊娠し卒業されたことになります。

表1は、当院の患者様がどのような治療法で妊娠されたのかを分析しました。

※表1

治 療 法 症 例 妊娠例に占める割合
1. ART(体外受精・顕微授精・凍結胚移植) 242 人 35.1 %
2. タイミング性交渉 197 人 28.6 %
3. 夫婦間人工授精 136 人 19.7 %
4. 排卵誘発(特にPCOS) 60 人 8.7 %
5. ホルモン治療 47 人 6.8 %
6. その他 8 人 1.3 %
690人 100.0 %

このように、ARTで妊娠された方が最も多いという結果でした。
しかし、全ての方にはじめからARTをおすすめしているわけではありません。その証拠に、タイミング法で妊娠された方も197例、28.6%と少なくありませんでした。
また、多嚢胞性卵巣(PCOS)に対する排卵誘発(Letrozole)や、子宮内膜症のような比較的難治性の不妊の方に対する治療においても、満足できる結果を得ております。

ART(体外受精・顕微授精・凍結融解胚移植)の成績

1.日本全国の成績

ARTを実施している医療機関は治療した症例の結果を一例毎に日本産婦人科学会に報告する義務があります。学会はその結果を集計し2年後に発表をしております。
グラフ1は全国の集計した2018年の最新結果です。
横軸は患者さんの年齢です。縦軸は妊娠率です。
妊娠率の出し方にはいろいろあります。
①移植あたりの妊娠率(/総ET・グラフ1最上段青バー)
②治療あたりの妊娠率(/総治療 2段目赤バー)
③流産をまぬがれて出産までできた出生率(生産率/総治療 3段目グリーンバー)

このうち①の1回の移植あたりどのくらい妊娠するかという結果が妊娠率としてよく用いられます。
グラフから明らかになるように加齢に伴って妊娠率が低下することが分かります。あえて区切れば37~38歳頃から低下します。
しかし20代~30代の前半では1回の移植あたり40~45%の方が妊娠に成功します。
逆に40歳以上の患者さんでも移植あたり20~25%の妊娠が得られます。
加齢による妊娠率の低下は主に卵の質の低下(染色帯異常の増加)と獲得できる卵の数が低下することが原因です。
もうひとつ気になるのは流産率です。グラフ1紫バーで示した流産率は30歳前半位までは10~15%位で自然妊娠の流産率よりやや高い頻度です。
しかし38歳頃から流産率はやや上昇し、40歳では25~30%に上昇し、40歳を超えると35~40%に上昇します。 これも卵の染色体異常が高くなるためです。

ART妊娠率・生産率・流産率 2018
https://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2018data_20201001.pdf

2.当クリニックのARTの治療成績

ARTを開始した2014年から2019年までの治療成績と最新の2020年1年間の治療成績を示します。
標準的には治療成績は胚移植当たりの妊娠率( /胚移植)で表されます。何周期の移植を行ってそのうちの何周期に妊娠が成立したかということを表しています。
また、移植のほとんどは、一般的に治療成績が良好とされている凍結融解胚移植を行っています。

2014年~2019年
融解胚移植の臨床成績

年齢 移植凍結胚 移植回数 妊娠数 妊娠率 流産率
~39歳 初期胚 492 138 28.0% 20.3%
胚盤胞 728 341 46.8% 22.6%
40歳~ 初期胚 235 33 14.0% 39.4%
胚盤胞 155 43 27.7% 30.2%

最も新しいデータを示します。

2020年
媒精方法別の採卵周期数

治療法 採卵周期数 凍結・移植に至った周期数(%)
IVF 101 56 (55.4)
ICSI 180 99 (55.0)
Split-ICSI 22 12 (54.5)
採卵のみ 49 -
合計 352 167 (47.4)

採卵周期における妻の年齢分布

融解胚移植の臨床成績

年齢 移植凍結胚 移植回数 妊娠数 妊娠率 流産率*
~39歳 初期胚 72 27 37.5% 14.8%
胚盤胞 181 71 39.2% 14.1%
40歳~ 初期胚 61 12 19.8% 25.0%
胚盤胞 65 17 26.2% 29.4%

*2020年1月末の時点の数値であり、後期流産などで数値が変動する可能性あり。

これを要約しますと30歳代までの若齢の症例においては初期胚移植での妊娠率が37.5%、胚盤胞移植では39.2%でした。また流産率はそれぞれ14.8%および14.1%でした。
一方、40歳以上の高齢の症例では初期胚移植での妊娠率が19.8%、胚盤胞移植では26.2%とやや低下します。また高齢になると一般的に流産率が30%以上へと上昇しますが、これは主に胚の染色体異常の発生頻度の上昇によるものとされています。

2020年の楠原ウィメンズクリニックのART治療成績
(凍結融解胚移植周期)

~39歳

40歳~

夫婦間人工授精法(AIHあるいはIUI)

3年間で684人の方が夫婦間人工授精(AIHまたはIUI)を行いました。
そのうち、新鮮精子によるAIHは654例、1,491周期行い、うち妊娠成立した方は154例、症例あたりの妊娠率は22.5%でした。

また当院では、ご主人が出張や転勤のため当日精液を確保できない場合、あらかじめ精液を凍結保存し、当日それを融解して人工授精に使用します。このような凍結精子によるAIHを行った方は30例で、うち6例(20.0%)の方が妊娠に至りました。
当初、凍結精子によるAIHの妊娠率はもっと低いものと予想していましたが、新鮮精子と大差ないものと考えられます。

※表3

精液採取法別AIH妊娠率