体外受精・胚移植法(IVF-ET)

体外受精・胚移植法(IVF-ET)

体外受精胚移植法の適応

卵管性不妊

①両側の卵管閉鎖

②卵管が開通していても癒着などにより、卵管の機能障害がある。

原因不明不妊

不妊期間が1年以上で、他の治療を行っても妊娠に至らない。

子宮内膜症

①軽度の子宮内膜症で他の不妊治療を行っても妊娠に至らない。

②重度の子宮内膜症で通常の不妊治療を行っても妊娠に至らない。
従来は腹腔鏡を行っていたが最近はこれをスキップし直接ARTをする傾向にある。

免疫性不妊

妻側に抗精子抗体があるため受精が障害される。

高齢不妊

加齢に伴う好孕力低下

男性因子による不妊(顕微授精 ICSI)

①総運動精子数が1000万個以下→顕微授精(ICSI)が必要

②総運動精子数が1000万個以上の場合で数回の人工授精で妊娠に至らない

体外受精胚移植法の概要

体外受精胚移植法は大きく分けて5つの段階を経て行われます。

体外受精移植法
卵巣刺激

採取出来る卵の数を増やすために排卵誘発剤を使い卵巣を刺激する過程です。これを卵巣刺激(Controlled Ovarian Stimulation)と呼びます。

採卵

膣から細い針を入れ卵巣内の卵を吸い取る方法です。これを採卵(Oocyte Pick Up)と呼びます。

媒精・体外受精・胚の培養

得られた卵は速やかに特殊な培養液に移され、培養器の中で培養されます。その数時間後、ご主人の精子を5~10万個卵子の入ったシャーレに加えて受精を促します。これを媒精と呼びます。
順調に発育すれば受精した卵(胚と呼びます)は2日目には4細胞、3日目には8細胞、5日目には胚盤胞に発育します。

胚凍結法

培養液の中で順調に発育した胚は従来は3日目あるいは5日目に子宮内に移植(新鮮胚移植)していましたが、最近ではこれらの胚を全てガラス化法という方法で凍結保存しておき、次周期以降に融解胚移植するのが主流となっています。

<第1段階>
卵巣刺激→採卵・媒精→胚培養→胚凍結
→次の周期→ <第2段階>
凍結胚融解→胚移植
凍結胚融解移植

採卵の次周期(排卵した後月経が始まった周期)に凍結保存した胚または胚盤胞を融解し、それを子宮内へと注入します。

卵巣刺激法

刺激法にはいろいろあります。そのうち代表的な方法を紹介します。
比較的おだやかな刺激法(mild Stimulation法)

①Clomid単独法
Clomidという比較的おだやかな誘発剤を月経3日目から1日2錠服用し、その後卵巣の発育を超音波やホルモンを測定してモニターする方法です。

Clomid単独

②Clomid+hMG(FSH)注射
Clomid単独法と同じく3日目からClomidを服用し、これに5日目、7日目、9日目に直接卵巣を刺激する性腺刺激ホルモン(hMGあるいはrFSH)を追加する方法です。

Clomid+hmg(FSH)注射

③Clomid少量連続投与法
Clomidを1日1錠または1/2錠、月経3日目からスタートし毎日連続服用し続ける方法です。卵胞が複数個発育したら注射を追加して刺激を加速させることもあります。
mild刺激法はどちらかというと卵巣機能が低下している方、あるいは年齢が進んでいる方に向いている方法です。

調節卵巣刺激法(Controlled Ovarian Stimulation法)
この方法は排卵誘発剤(主に注射)を使って十分に卵巣を刺激し多くの卵を獲得することを目指す方法です。

①アンタゴニスト法(antagonist法)
月経開始の3日目から卵胞を刺激するrFSH、あるいはHMGという注射を連日注射し、卵胞の発育を促します。
しかし刺激だけしていくと卵巣から卵が勝手に排卵したりLHという排卵を促すホルモンがでる可能性があります。これを防ぐため、FSHまたはHMG注射の5~6日目からアンタゴニストという薬(当院では注射のガニレストあるいは内服のレルミナ錠)を使用し早期の排卵を防ぎながら卵胞の発育を促進します。
アンタゴニスト法 つまりアクセルを踏みながらブレーキをかけてコントロールする方法です。
そして、卵胞が17~18㎜の大きさに達したら最終的に卵の成熟と排卵を促すhCG(あるいはレコンビナントLH)を注射します。このhCG注射の約36~40時間後に排卵がおこりますからその直前つまり、hCG注射後36時間後に採卵します。

②ショート法(Short プロトコール)
この方法は比較的卵巣機能が低下している方に向いている方法です。月経3日目からFSHまたはhMGを注射する方法はアンタゴニスト法と同じです。この方法の特徴はアンタゴニストの代わりに月経2日目からGn-RHaという薬(点鼻薬)を使い脳内のホルモン中枢(脳下垂体)を刺激し、そこから卵巣を刺激するホルモン(ゴナトロピン)の分泌をさらに促す作用がある点です。その結果、卵巣は注射から受ける刺激と自身のホルモン中枢から出る刺激ホルモンの両法に刺激され充分な卵の発育が期待できます。
ショート法

③ロング法(Longプロトコール)
従来はよくこの方法が使われていましたが、より安価で簡便なantagonist法が汎用されてからは最近あまり用いられなくなりました。名前だけ記載しました。

採卵の方法

採卵は下図に示したように膣内に超音波プローブ(経腟エコープローブ)を入れ、その上に細い針を固定するアタッチメントを装着し、膣音波図面を見ながら卵巣の中の卵胞を穿刺します。
卵胞液を吸引すると卵胞の壁に付いていた卵が一緒にとれてきます。この卵を手早く取り出し培養液の中に移します。

採卵の方法

1) 採卵に向けての準備

①最終的な採卵日は、採卵日の2日前に決まります。採卵日はおおむね、月経開始の2週間前後になる事が多いです。
②採卵には麻酔をしますので、採卵当日の勤務は避けてください。
③ご主人の精液は当日の朝、自宅で採取し、これを奥様が持参していただきます。もしご自宅が遠方の場合は、当日の朝、クリニック内でとっていただくことも可能です。
④お会計は採卵日の当日、採卵に要する費用を承ります。
 (カードでのお支払いが可能です。)

2) 採卵日の流れ

①採卵は通常午前8時30分頃からスタートします。
ですから、この20分くらい前、つまり8時10分くらいに来院していただきます。
②当日の朝は水分摂取と食事はできません。
③採卵にあたっては麻酔をします。麻酔法は静脈注射あるいは膣内局所麻酔で行います。
麻酔中ほとんど痛みはありません。また、意識もある程度保たれます。
④採卵時間はおよそ3~7分位です。
⑤採卵が終了したら、回復室にて2~3時間安静にしていただきます。
⑥その後問題がなければ、こちらで用意する軽食をとっていただきます。
⑦超音波にて最終チェックをした後、採卵の結果を御説明します。
また、胚移植等の御案内をいたします。