月経痛(生理痛)Menstrual pain

Ⅱ月経痛(生理痛)Menstrual pain

1.なぜ生理痛がおこる?

月経(いわゆる生理)が始まる1~2日前からの下腹部の張り感(膨満感)からはじまり、月経期間中に持続する下腹部痛を月経痛といいます。程度の差はあれ、女性の 約40%位がこの症状を伴うといわれています。この下腹部痛に加え、頭痛,嘔気などが伴い、日常生活に支障が場合を月経困難症といいます。  生理痛がおこる原因は次の通りです。 子宮は平滑筋という筋肉でできている袋状の臓器ですが、その内側(袋の裏側)に子宮内膜という膜状の組織が裏うちしています。 卵巣から排卵した卵は卵管内で受精後、卵管の蠕動で子宮内に到達し、最終的には先の子宮内膜にくっつき(着床)妊娠が成立します。 しかし、妊娠が成立しないと内膜は剥がれて出血し、子宮外に排出されます。これが月経です。 子宮内膜の中にはプロスタグランディン(Pg)という局所ホルモンが含まれています。このPgは子宮筋を収縮させ、その結果痛みが発生するのです。お産の時、陣痛がおこりますがこれもPgによる子宮筋の収縮です。月経痛が強い女性の子宮内膜中のPgは痛みのない人と比較しその濃度が高い事がわかっています。 つまり月経痛(生理痛)の犯人はこのPgなのです。

2.月経痛には2つある

 月経痛には¨様子をみてよい¨月経痛と¨受診を必要とする¨月経痛とがあります。様子をみてよい月経痛とは前述した子宮内膜中の局所ホルモンのプロスタグランディン(Pg)濃度が高い方の場合です。これは原発性月経困難症とよばれます。 一方、受診を必要とする月経痛はその原因がPgの濃度ではなく、子宮内膜症や子宮腺筋症,子宮筋腫,子宮奇形など他の婦人科疾患を原因としておこるものです。これを続発性月経困難症とよびます。特に子宮内膜症はその代表的な病気です。

3.様子をみてよい月経痛と受診を必要とする月経痛の見分け方

おおまかではありますが両者の簡単な見分け方を紹介します。

  様子をみてよい月経痛
(原発性月経困難症)
受診を必要とする月経痛
(続発性月経困難症)
1.発症年齢 10才代 初経が始まって1~2年頃からと比較的早い時期から 10才代から20才前半位までは軽かったのに30才になって強くなる
2.痛みの強さ ・月経痛の強さは変わらない
・ますます強くはならない
・鎮痛剤がいらないか少量の鎮痛剤
・以前と比べ年々増強する
・鎮痛剤の量が増えるかピルなどが必要となる

 これは極おおざっぱな見分け方です。全ての方がこれにあてはまるものではありません。ですから、鎮痛剤が必要な月経痛がある方は婦人科医を受診して下さい。

4.月経痛の治療は?

 善玉月経痛の原因は子宮内膜中のプロスタグランディン(Pg)が高いことですからPgを抑える薬が有効です。(抗プロスタグランディン剤)。
 問題は悪玉月経痛、その代表である子宮内膜症の場合です。これには単なる鎮痛剤では効かない場合があり、またこの方法では子宮内膜症が進行してしまいます。毎月排卵がおこり、卵巣から女性ホルモンが分泌されると内膜症が刺激され進行してしまいます。従って、内膜症による月経痛対策として卵巣からのホルモン分泌を抑えるピルが有効です。子宮内膜症が進行する前からスタートしたいものです。月経痛が強かったら早目の受診をおすすめします。