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培養室の研究・活動報告 2022年日本卵子学会学術集会

こんにちは、楠原ウィメンズクリニック培養室です。

5月に京都にて開催された『日本卵子学会学術集会』に参加してきました!

当院からは口演で『Piezo-ICSIにおける異常破膜によって生じる変性はPVP曝露で回避できる』を発表いたしました。


簡単に概要だけご説明すると、

Piezo-ICSI(顕微授精)は卵母細胞の細胞膜を伸展させ、ピエゾを駆動させて破膜しますが、駆動前に破膜する場合(異常破膜)があります。このような異常破膜はICSI後の変性率が高いことが報告されています。
患者さんの中には、細胞膜が弱く、8割の受精率を出すことが可能な顕微授精でさえも受精させることが出来ず変性してしまう方がいらっしゃいます。
そのような変性を回避することはできないかと試行錯誤して行ったのが今回の研究になります。

本検討では、異常破膜した卵母細胞の変性回避策としてPVP(ポリビニルピロリドン)溶液に着目しました。

PVPとは精子不動化処理で使用され、精子の運動速度を抑制しピックアップを容易にし、ピペット管壁の精子の付着を防止できるというメリットがあり多くの施設で使用されています。

異常破膜卵に直ちにPVPを曝露し高浸透圧下にすることで、卵母細胞が収縮し穿破部位からの細胞膜の漏出を防ぎ、変性を回避することが期待されます。


今回の卵子学会では優秀演題賞の候補に選ばれましたが、残念ながら賞獲得には至りませんでした(;_;)
引き続き、アップデートをして研究を進めていきたいと思います!