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サウナは精子に有意な変化をもたらす

こんにちは、楠原ウィメンズクリニック培養室です。

近年流行っているサウナについて言及していきたいと思います。

東京都内でもおしゃれなサウナが続々とオープンしており、居酒屋と併設されたサウナや会員制サウナ、まるでホテルのようなサウナとバラエティに溢れていますよね。



でもそのサウナ、入りすぎは禁物です…

少し前に報告された論文ですが、
「Seminal and molecular evidence that sauna exposure affects human spermatogenesis(引用文献1)」

和訳すると
「サウナ曝露がヒトの精子形成に影響を与える」です。


温度による精巣への影響は既に多く研究されており、熱ストレスは精子形成に悪影響を及ぼすことが知られています(引用文献2~4)。

ヒトでは通常より1~1.5℃程、陰嚢の温度を上げると精巣のサイズや精子生成が減少し、精子の形態も変化します(引用文献5,6)。

今回の研究では、正常な精子をもつ男性10名に対し、80~90℃で1回15分間を週2回、3か月間継続してサウナに入ってもらいました。サウナ前と後、またサウナ中止からさらに3か月後、6か月後に精子の状態を比較。

結果、サウナ前と後の平均陰嚢温度はそれぞれ34.5±0.6℃と37.5±0.4℃(p<0.01)。
圧倒的にサウナ後の方が高いですね…。

サウナ前(T0)とサウナ後(T1)では精子濃度、運動精子濃度が有意に減少しました。
また、サウナ前(T0)とサウナ中止から3か月後(T2)を比較しても完全に精子濃度は回復することなく、サウナ中止から6か月経過後に初めてサウナ前の精子濃度まで回復したことを示しました。なお精液量、精子形態、生存率に有意差はありませんでした(画像参照)。

さらに、サウナ前(T0)とサウナ後(T1)ではクロマチン変化(DNAやタンパク質に影響)、ミトコンドリア機能障害(ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生産する工場のようなもの)が起き、それらはサウナ中止から3か月後(T2)に回復されました。



体に良いとされているサウナですが、なんと、サウナを完全に中止しても約半年間は精巣に対してサウナの悪影響が出てしまうという結果でした。

入りすぎは精子に大きく影響してしまうのですね。
上記の論文は1回15分を週2回という頻度で検証しておりますが、それ以上の頻度でサウナに入られているサウナーさんは妊活時にはサウナの頻度を調節した方が良いかもしれないです。

サウナを継続的に続けたら、最終的に精巣はどうなってしまうのか、そこまでの論文は見当たらなかったので不明なままです。



以前、男性因子でいらした患者さんのお話ですが、その方はパソコンを膝の上でずっと操作されていると仰っておりました。パソコンの熱で精巣を常に温めてしまうとサウナと同じく精子に悪影響なので、妊活にとって生活習慣の見直しはとても大事です。

BMI30以下、肥満改善、適切な運動、栄養のある食事など
一つ一つ心がけていきましょう。



引用文献
1) Andrea Garolla, Human Reproduction, vol28, Issue4, p877-885, April 2013
2) R Mieusset, Adv Exp Med Biol, vol.286(pg.233-237), 1991
3) R Mieusset and Bujan,Int Androl, vol.18(pg.169-184), 1995
4) Jung and Schuppe, Andrologia, vol.39(pg.203-215), 2007
5) Bedford JM, J Exp Zool, vlo.224(pg.379-388), 1982
6) JungA, Andrologia, vol.39(pg.203-215), 2007