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なぜ5AAでも妊娠しないのか? ― 胚培養士が原因と“次に整理したいポイント”を解説 ―#6

こんにちは、楠原ウィメンズクリニック培養室です。
5AAの胚盤胞を移植しても妊娠しなかったときに、何を考えるべきかを解説します。

●結論
5AAは非常に良好な胚盤胞ですが、
妊娠を保証する評価ではありません!
妊娠は
「胚 × 子宮 × タイミング」
の組み合わせで決まるため、
1回の移植で結果が出ないことは医学的に珍しくありません。

●この記事で分かること
✔5AAでも妊娠しない主な理由
✔1回の不成功でどこまで心配すべきか?
✔次の移植前に整理したいポイント

●こんな方におすすめ
✔5AA胚盤胞を移植したが陰性だった
✔良好胚なのに結果が出ない理由を知りたい
✔次に何を見直すべきか迷っている

●そもそも5AAとは?
胚盤胞は以下の3つで評価されます。
• 発育段階(1〜6)
• 内細胞塊(ICM)=赤ちゃんになる部分
• 栄養外胚葉(TE)=胎盤になる部分
→ 5AAは
非常に良好な胚盤胞のひとつです!

●なぜ5AAでも妊娠しないのか?
① 染色体異常は見た目では分からない
胚の形態評価と染色体正常性は一致しません。
とくに
年齢とともに胚の異数性頻度は上昇します!
そのため、見た目が良好でも
• 着床することはあります
• しかし流産率が高くなる傾向があります
「良い形」=「正常な中身」ではありません!

② 子宮側の要因(着床環境
妊娠は胚だけで決まるものではありません。
主な要因:
• 子宮内膜の状態
• ポリープ・粘膜下筋腫などの病変
• 慢性子宮内膜炎
→ これらは着床に影響することがあります。
※慢性子宮内膜炎については診断や治療の標準化にはまだ課題があります!
また、
• 着床のタイミング(いわゆる“着床の窓”)
についても研究されていますが、
ERAなどの検査はすべての患者さんに有効性が確立しているわけではありません!

③ 胚の“個体差”
同じ5AAでも
• 発育能力
• DNA損傷
• 代謝状態
などに違いがあります。
見た目が同じでも結果が同じとは限りません!
※現時点では、これらを臨床で正確に評価する方法は限定的です。

④ 精子由来の影響
• DNA断片化
• 精子成熟度
受精後の発育や着床に影響する可能性があります!

⑤ 1回で結果が出ないのは普通?
珍しくありません
良好胚でも
1回で必ず妊娠するわけではありません

●1回陰性だったときの考え方
1回の結果だけで結論を出す必要はありません
一方で、
→ 複数回続く場合は
原因を整理して考えることが重要です!

●5AAで陰性だった後に整理したいポイント
✔ 年齢とこれまでの移植回数
✔ 胚の作成経過(受精方法・培養経過)
✔ 他の胚の有無・グレード
✔ 子宮内病変の有無
✔ 慢性子宮内膜炎の評価の必要性
✔ 移植周期の組み方
✔ 男性因子の再評価余地
「胚・子宮・移植周期」の3つに分けて整理すると理解しやすくなります!

●検査や治療はどう考える?
以下は状況によって検討されます。
• PGT-A(染色体検査)
• 子宮内環境の評価
• 着床時期の検討
ただし
これらはすべての方にルーチンで推奨されるものではありません
年齢・治療歴・胚の状況に応じて個別に判断されます

●まとめ
→ 5AAは非常に良好な胚だが、成功を保証するものではありません。
→ 妊娠は「胚 × 子宮 × タイミング」で決まります。
→ 1回の結果で判断しないことが重要です。

●受診を考えるタイミング
以下に当てはまる場合は、一度整理してみることをおすすめします。
• 良好胚での移植が複数回うまくいかない
• 次に何を見直すべきか迷っている
• 検査を受けるべきか判断がつかない

当院では、これまでの治療経過をもとに
「胚・子宮・移植周期」の3点を整理し、必要な見直しを個別にご相談いただけます!

●よくある質問(Q&A)
Q1. 5AAなのに妊娠しないのは異常ですか?
A. 異常ではありません。医学的にも一定割合で起こります。

Q2. 染色体異常でも妊娠しますか?
A. 妊娠反応が出ることはありますが、流産率が高くなる傾向があります。

Q3. 何回くらいで妊娠しますか?
A. 個人差が大きく、一概には言えません

Q4. 子宮に問題がある可能性はありますか?
A. あります。子宮内環境も重要な要素です。

Q5. 次に何をすればいいですか?
A. 「胚・子宮・移植周期」の3点を整理することが第一歩です。

参考文献
1. Gardner DK, Schoolcraft WB. In vitro culture of human blastocysts. In: Jansen R, Mortimer D, editors. Toward Reproductive Certainty: Fertility and Genetics Beyond 1999. Carnforth: Parthenon Press; 1999. p. 378–388.
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