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受精したのに育たないのはなぜですか?~胚培養士が解説~#4
こんにちは楠原ウィメンズクリニック培養室です。
「受精はしたのに、胚盤胞まで育たなかった...」
「見た目は良さそうだったのに、途中で止まってしまった...」
こうした結果に、戸惑いやつらさを感じる方はとても多いです。
まずお伝えしたいのは、
同じような経験をされる方は少なくありませんということです。
今回は、胚培養士の視点から
「受精したのに育たない理由」をわかりやすく解説します。
① 受精=ゴールではない?
まず大切なポイントです。
受精は“スタートライン”に立った状態です。
受精(2PN)した胚は、その後
✔分割(2細胞→4細胞→8細胞)
✔胚盤胞への発育
という長いプロセスを経ます。
この過程で
一定の割合で途中で発育が止まることがあります。
② 大きな要因のひとつは「染色体」
受精後に発育が止まる原因として、
胚の染色体異常は代表的で重要な要因の一つです。
卵子や精子の段階で、すでに染色体に異常があると
✔分割が止まる
✔成長スピードが遅れる
✔胚盤胞にならない
といったことが起こります。
特に
年齢が上がると染色体異常の割合は増えることが知られています。
③ 初期発育と遺伝子の切り替わり
「Day3までは順調だったのに…」というケースも多いです。
これはなぜでしょうか?
受精後しばらくの発育は
卵子に蓄えられた因子(母性因子)に支えられています
その後、発育が進むにつれて
胚自身の遺伝子の働きが重要になっていきます
この切り替わりの過程で問題があると、
発育が止まることがあります。
④ 精子の影響もある?
見落とされがちなポイントとして、精子の影響もあります。
受精後の発育には精子由来のDNAも関与します。
例えば
✔DNA断片化(DFI)
✔精子の成熟度
などは、胚発生との関連が示唆されています。
ただし
すべてのケースで大きな影響を与えるわけではなく、個別に評価が必要です
▶ 精子DNA断片化(DFI)について詳しくはこちらをご参考ください
⑤ よくある誤解
×「受精した=妊娠できる」
→ 実際はスタート地点です
×「グレードが良ければ必ず育つ」
→ 見た目と中身(染色体)は別です
×「育たなかった=治療が失敗」
→ 次につながる重要な情報です
●よくある質問(Q&A)
Q1. 受精したのに育たないのは異常ですか?
A. いいえ、異常というわけではありません。
同じような経験をされる方は少なくなく、一定の確率で起こり得る現象です。。その周期の胚の性質によることが多いと考えられています。
Q2. 毎回胚盤胞にならないのは問題ですか?
A. 回数や年齢によって評価が変わります。
1回だけであれば珍しいことではありませんが、繰り返す場合には原因の検討が必要になることもあります。
気になる場合は医師と相談し、今後の方針を一緒に考えていきます。
Q3. 卵の質を良くする方法はありますか?
A. 生活習慣(睡眠・栄養・禁煙など)を整えることは大切です。
ただし、現時点の医学では年齢の影響が大きいと考えられており、完全にコントロールできるものではありません。
無理のない範囲で整えていくことが大切です。
Q4. 精子の影響はどれくらいありますか?
A. 主に受精率や初期発育との関連が示唆されています。
ただし、すべてのケースで大きく影響するわけではなく、卵子側の要因とあわせて総合的に評価されます。必要に応じて検査を検討することもあります。
Q5. DFIは検査した方がいいですか?
A. すべての方に必須の検査ではありません。
ただし、胚盤胞になりにくい場合や流産を繰り返す場合などには、原因の一つとして検討されることがあります。
検査の必要性については、個々の状況に応じて判断されます。
▶ DFIの検査について詳しくはこちらをご参考ください
●まとめ
「受精したのに育たない」
これはとてもつらい結果ですが、
多くは胚が本来持っている性質によるものです。
そして、
染色体異常など複数の要因が関与し、
精子の状態なども一部関係する可能性があります。
この結果は
今後の治療方針を考えるための重要な情報でもあります。
不安な点は、遠慮なくご相談ください。
※当院では、
胚培養士が直接ご相談をお受けする「培養士相談外来」も行っています。
受精のことや胚の発育、凍結についてなど、
培養室に関することで疑問に思うことや、ちょっと聞いてみたいことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください!
培養士相談外来の詳細は→こちら
参考文献
1. Gardner DK, Schoolcraft WB. In vitro culture of human blastocysts. J Reprod Immunol. 1999.
2. Alpha Scientists in Reproductive Medicine. The Istanbul consensus workshop on embryo assessment. Hum Reprod. 2011.
3. Franasiak JM et al. The nature of aneuploidy with increasing age. Fertil Steril. 2014.
4. Rienzi L et al. Embryo development and chromosomal abnormalities. Hum Reprod Update. 2010.
5. Zini A, Sigman M. Are tests of sperm DNA damage clinically useful? Nat Rev Urol. 2009.
6. Simon L et al. Sperm DNA damage and its impact on assisted reproduction. Fertil Steril. 2017.
7. American Urological Association / American Society for Reproductive Medicine. Male Infertility Guideline. 2024.
8. European Association of Urology. Sexual and Reproductive Health Guidelines. 2023.
「受精はしたのに、胚盤胞まで育たなかった...」
「見た目は良さそうだったのに、途中で止まってしまった...」
こうした結果に、戸惑いやつらさを感じる方はとても多いです。
まずお伝えしたいのは、
同じような経験をされる方は少なくありませんということです。
今回は、胚培養士の視点から
「受精したのに育たない理由」をわかりやすく解説します。
① 受精=ゴールではない?
まず大切なポイントです。
受精は“スタートライン”に立った状態です。
受精(2PN)した胚は、その後
✔分割(2細胞→4細胞→8細胞)
✔胚盤胞への発育
という長いプロセスを経ます。
この過程で
一定の割合で途中で発育が止まることがあります。
② 大きな要因のひとつは「染色体」
受精後に発育が止まる原因として、
胚の染色体異常は代表的で重要な要因の一つです。
卵子や精子の段階で、すでに染色体に異常があると
✔分割が止まる
✔成長スピードが遅れる
✔胚盤胞にならない
といったことが起こります。
特に
年齢が上がると染色体異常の割合は増えることが知られています。
③ 初期発育と遺伝子の切り替わり
「Day3までは順調だったのに…」というケースも多いです。
これはなぜでしょうか?
受精後しばらくの発育は
卵子に蓄えられた因子(母性因子)に支えられています
その後、発育が進むにつれて
胚自身の遺伝子の働きが重要になっていきます
この切り替わりの過程で問題があると、
発育が止まることがあります。
④ 精子の影響もある?
見落とされがちなポイントとして、精子の影響もあります。
受精後の発育には精子由来のDNAも関与します。
例えば
✔DNA断片化(DFI)
✔精子の成熟度
などは、胚発生との関連が示唆されています。
ただし
すべてのケースで大きな影響を与えるわけではなく、個別に評価が必要です
▶ 精子DNA断片化(DFI)について詳しくはこちらをご参考ください
⑤ よくある誤解
×「受精した=妊娠できる」
→ 実際はスタート地点です
×「グレードが良ければ必ず育つ」
→ 見た目と中身(染色体)は別です
×「育たなかった=治療が失敗」
→ 次につながる重要な情報です
●よくある質問(Q&A)
Q1. 受精したのに育たないのは異常ですか?
A. いいえ、異常というわけではありません。
同じような経験をされる方は少なくなく、一定の確率で起こり得る現象です。。その周期の胚の性質によることが多いと考えられています。
Q2. 毎回胚盤胞にならないのは問題ですか?
A. 回数や年齢によって評価が変わります。
1回だけであれば珍しいことではありませんが、繰り返す場合には原因の検討が必要になることもあります。
気になる場合は医師と相談し、今後の方針を一緒に考えていきます。
Q3. 卵の質を良くする方法はありますか?
A. 生活習慣(睡眠・栄養・禁煙など)を整えることは大切です。
ただし、現時点の医学では年齢の影響が大きいと考えられており、完全にコントロールできるものではありません。
無理のない範囲で整えていくことが大切です。
Q4. 精子の影響はどれくらいありますか?
A. 主に受精率や初期発育との関連が示唆されています。
ただし、すべてのケースで大きく影響するわけではなく、卵子側の要因とあわせて総合的に評価されます。必要に応じて検査を検討することもあります。
Q5. DFIは検査した方がいいですか?
A. すべての方に必須の検査ではありません。
ただし、胚盤胞になりにくい場合や流産を繰り返す場合などには、原因の一つとして検討されることがあります。
検査の必要性については、個々の状況に応じて判断されます。
▶ DFIの検査について詳しくはこちらをご参考ください
●まとめ
「受精したのに育たない」
これはとてもつらい結果ですが、
多くは胚が本来持っている性質によるものです。
そして、
染色体異常など複数の要因が関与し、
精子の状態なども一部関係する可能性があります。
この結果は
今後の治療方針を考えるための重要な情報でもあります。
不安な点は、遠慮なくご相談ください。
※当院では、
胚培養士が直接ご相談をお受けする「培養士相談外来」も行っています。
受精のことや胚の発育、凍結についてなど、
培養室に関することで疑問に思うことや、ちょっと聞いてみたいことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください!
培養士相談外来の詳細は→こちら
参考文献
1. Gardner DK, Schoolcraft WB. In vitro culture of human blastocysts. J Reprod Immunol. 1999.
2. Alpha Scientists in Reproductive Medicine. The Istanbul consensus workshop on embryo assessment. Hum Reprod. 2011.
3. Franasiak JM et al. The nature of aneuploidy with increasing age. Fertil Steril. 2014.
4. Rienzi L et al. Embryo development and chromosomal abnormalities. Hum Reprod Update. 2010.
5. Zini A, Sigman M. Are tests of sperm DNA damage clinically useful? Nat Rev Urol. 2009.
6. Simon L et al. Sperm DNA damage and its impact on assisted reproduction. Fertil Steril. 2017.
7. American Urological Association / American Society for Reproductive Medicine. Male Infertility Guideline. 2024.
8. European Association of Urology. Sexual and Reproductive Health Guidelines. 2023.



