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卵子凍結、今の私には必要?前編

卵子凍結、今の私には必要?

― 35歳からの現実を踏まえて…
やる? やらない? ― 



〈卵子凍結を悩んでいる方へ〉



卵子凍結について、35歳を過ぎた私たちはどう考える?

最近、卵子凍結が話題になる機会が増えました。
YouTubeで体験談が語られていたり、東京都の助成制度をきっかけに、一気に身近な話題になったと感じている方も多いと思います。

35歳を過ぎると、
「そろそろ考えた方がいいのかな」
「もう遅いのでは?」
そんな気持ちが、ふと心に浮かぶこともあるかもしれません。

産婦人科医としても、卵子凍結そのものを良い・悪いで判断することはできません。
ただ、30代後半という、この年代ならではの考え方のポイントがあると思っています。
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35歳以降、何が変わるのか

医学的に見ると、妊娠率は35歳前後から徐々に低下していきます。
これは努力や気合でどうにかできる話ではなく、卵子の質と数という、生物学的な現実です。

一方で、
・仕事の経験値が上がり、キャリアアップを検討するなど余裕が出てきた
・自分の人生を主体的に考えられるようになった
という意味では、判断力が最も成熟している時期でもあります。

だからこそ30代後半は、
「焦って決める」でも
「何となく先延ばしにする」でもない
選択ができる年代だと感じています。
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卵子凍結が“現実的な選択肢”になりやすい人

次のような状況に心当たりがある場合、卵子凍結は一度きちんと検討する価値があります。

・将来、子どもを持ちたい気持ちはある
・ただし、今すぐ妊娠・出産の予定は立てられない
・40代で妊娠を考える可能性が現実的にある

この場合、卵子凍結は
「可能性を先に確保する」ための選択になり得ます。
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治療にともなう効果 ― 低下する妊娠率に“もう一手”を加える意味

35歳を過ぎると、妊娠率は少しずつ低下していきます。
そして40代に入ると、その低下のスピードはさらに速くなります。

これは、子宮や体力の問題というよりも、
卵子の質が年齢とともに変化していくことが大きな要因です。

実際、40代で妊娠を目指す場合、
・排卵はあっても受精しにくい
・受精しても胚の発育が止まりやすい
・妊娠しても流産率が高くなる
といった現実に直面することが少なくありません。


■ 卵子凍結があると、選択肢が一つ増える

ここで意味を持ってくるのが、卵子凍結です。

卵子凍結は
「妊娠する年齢」ではなく、「卵子を凍結した年齢」の卵子の質
を将来に持ち越せる方法です。

たとえば
・40代で妊娠を考えたとき時
・その時点の卵子だけで勝負する
のではなく、
35〜39歳の時点で凍結した卵子という“もう一手”
を使える可能性が生まれます。

これは妊娠率の低下を止める魔法ではありませんが、
低下していく流れの中で、戦略を1つ増やせるというという意味を持ちます。


■ 「時間を戻す」ではなく「選択肢を増やす」

卵子凍結は、年齢の影響を完全になかったことにする治療ではありません。

けれども、
・その時の自分の年齢だけに縛られない
・将来の選択肢を1つ増やしておく
・「あの時、何もしていなかった」という後悔を減らす

という点で、35歳以降の女性にとって現実的で静かな効果を持つ選択肢です。

妊娠率は年齢を重ねるほどに下がっていくと分かっているからこそ、
何もしないか、
それとも“もう一手”を準備しておくか。

卵子凍結は、その分かれ道に立ったとき時の、ひとつ1つの具体的なカードになります。
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35歳以上で卵子凍結を考えるとき時の注意点(過度な期待をしないために)

卵子凍結は、妊娠を保証するものではありません。
男性因子(精子の数や運動率)や子宮の問題があれば、それだけで解決できるわけでもありません。

また、
・採卵や通院の身体的負担
・年間の保管料
といった現実もあります。

それでも
「将来、あの時に考えなかったことを後悔しそう」
そうと感じるなら、卵子凍結は向き合う価値のある選択だと思います。

40代以降に妊娠を目指すこともがめずらしい事ではくない現代で、自分のライフプランに何を加えるか、これを機会に見直してみましょう。
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産婦人科医として、30代後半の方に伝えたいこと

卵子凍結は、
若さを取り戻す手段ではありません。
今の判断力で未来の選択肢を残す手段です。

大切なのは、
「やる・やらない」ではなく
「考えた上で選んだ」と言えるかどうか。

そのために、一度立ち止まって整理する時間を、ぜひ持ってみてください。

次回は、卵子凍結を決めた方人に向けて、ぜひ知っておいてほしいポイントをお伝えします。


*次回:卵子凍結、今の私には必要?
― 35歳からの現実を踏まえて、未来の自分に説明できる選択を ―も合わせて読んでみてください。