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精液検査が正常でも妊娠しない理由とは?~胚培養士が解説~#2
こんにちは、楠原ウィメンズクリニック培養室です。
治療を続ける中で、「なぜうまくいかないのか」と不安に感じることもあるかと思います。
今回は、その一因となり得る“精子の見えない質”についてお話しします。
●精子の“見えない質”を評価する「DFI検査」と「抗酸化力検査」
「精液検査は問題なかったのに、なかなかうまくいかない…?」
そのようなお悩みを抱えていませんか?
一般的な精液検査では
精子の数・運動率・形態を評価しますが、
“精子の質(DNAの状態)”までは分かりません
近年、この“見えない質”が妊娠に関係していることが分かってきています。
●DFI(DNA断片化指数)とは?
DFIとは
精子DNAの損傷の程度を数値で評価する検査です。
精子の中には、赤ちゃんの設計図となるDNAが含まれていますが、
加齢・ストレス・生活習慣・酸化ストレスなどの影響により
DNAが傷ついてしまうことがあります。
●DFIが高い場合に起こりうること
✔受精はするが、その後の発育に影響が出ることがある
✔胚盤胞まで育ちにくい傾向が報告されている
✔流産率との関連が報告されている
つまり、
受精後の胚発育や妊娠経過との関連が報告されている指標です。
●抗酸化力(TAC)とは?
体内では
「酸化(ダメージ)」と「抗酸化(防御)」のバランスが保たれています。
しかし、
✔喫煙
✔睡眠不足
✔ストレス
✔加齢
などにより酸化ストレスが増加すると、
精子DNAがダメージを受けやすくなることが知られています
●抗酸化力が低い状態とは?
ダメージを防ぐ力が弱い状態です。
酸化ストレスは、
DFI上昇に関与する要因の一つと考えられています。
●DFIと抗酸化力はセットで考えることが重要です
この2つは
✔抗酸化力の低下
✔酸化ストレスの増加
✔DNA損傷の蓄積
という流れで関連しています。
そのため当院では、
DFI検査と抗酸化力検査を組み合わせて評価することで、
✔なぜうまくいかないのか
✔何を改善すべきか
をより具体的に考えることができます。
●このような方に検査をおすすめします
✔精液検査は正常だが結果が出ない
✔胚盤胞まで育たない
✔流産を繰り返している
✔男性側の生活習慣が気になる
✔原因不明不妊といわれた
●改善できる可能性があります
DFIや抗酸化力は、
生活習慣の見直しや背景要因への対応によって改善が期待できる場合があります
例えば
✔禁煙
✔睡眠改善
✔体重管理
✔精索静脈瘤などの治療
などが重要です。
抗酸化療法(サプリメントなど)は選択肢の一つですが、有効性には個人差があり、現在も議論があります。
●まとめ
✔精子は「数」だけでなく「質」も重要
✔DFIでDNAの状態を評価
✔抗酸化力でダメージの背景を評価
✔両方を確認することで、より適切な対策が可能
●よくあるご質問(Q&A)
Q1. DFI検査とは何ですか?
DFI検査とは、
精子DNAの損傷(断片化)の程度を数値で評価する検査です。
通常の精液検査では分からない、
精子の“質”を評価することができます。
Q2. 精液検査が正常でも妊娠しないことはありますか?
はい、あります。
精液検査では
数・運動率・形態を評価しますが、
DNAの状態までは評価されません
そのため、見た目が正常でも
受精後の発育に影響が出ることがあります。
Q3. DFIの基準値は何%以上が問題ですか?
DFIの目安は検査方法によって異なりますが、一般的には
✔15%未満:良好
✔15〜25%:やや高値
✔25%以上:高値の目安
とされることが多いです。
ただし、検査法や施設によって基準が異なるため、
結果は個別に評価することが重要です
Q4. DFIや抗酸化力は改善できますか?
はい、改善が期待できる場合があります。
✔禁煙
✔睡眠改善
✔生活習慣の見直し
✔背景疾患への対応
などにより、
数値が改善する可能性があります
Q5. どのような人が検査を受けるべきですか?
以下のような方におすすめです。
✔精液検査は正常だが結果が出ない
✔胚盤胞まで育たない
✔流産を繰り返している
✔原因不明不妊といわれた
“原因が分からない不妊”の評価に有用な検査です
●最後に
「原因が分からない不妊」には、
見えない要因が関係していることがあります
「精液検査は問題ない」と言われた方の中にも、
実は“精子の質”にヒントが隠れていることがあります。
●検査をご検討の方へ
当院は、
東京都プレコンセプションケアに係る検査費等助成事業の登録医療機関です。
また、
令和7年度より、男性の検査項目としてDFI検査が助成対象に追加されました。ただし、DFI検査のみでは助成対象とならず、精液検査とあわせて受ける必要があります。制度の利用には、対象条件などの要件がありますので、詳細は事前にご確認ください。
「何かできることがないか知りたい」
「次の一手を考えたい」
そのようなタイミングで、
一度“精子の質”を確認してみることは有意義な選択肢の一つです
検査の詳細や流れについては、こちらをご参考ください
参考文献
1. Agarwal A, et al.
Sperm DNA fragmentation: a critical assessment of clinical practice guidelines.
World J Mens Health. 2020
2. Esteves SC, et al.
Clinical utility of sperm DNA fragmentation testing: practice recommendations.
Andrologia. 2017
3. European Association of Urology (EAU)
Sexual and Reproductive Health Guidelines. 2024
4. American Urological Association (AUA) / American Society for Reproductive Medicine (ASRM)
Diagnosis and Treatment of Infertility in Men. 2020–2024 update
5. World Health Organization
WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed. 2021
6. Steiner AZ, et al.
The effect of antioxidants on male fertility: a randomized controlled trial.
Fertil Steril. 2020
治療を続ける中で、「なぜうまくいかないのか」と不安に感じることもあるかと思います。
今回は、その一因となり得る“精子の見えない質”についてお話しします。
●精子の“見えない質”を評価する「DFI検査」と「抗酸化力検査」
「精液検査は問題なかったのに、なかなかうまくいかない…?」
そのようなお悩みを抱えていませんか?
一般的な精液検査では
精子の数・運動率・形態を評価しますが、
“精子の質(DNAの状態)”までは分かりません
近年、この“見えない質”が妊娠に関係していることが分かってきています。
●DFI(DNA断片化指数)とは?
DFIとは
精子DNAの損傷の程度を数値で評価する検査です。
精子の中には、赤ちゃんの設計図となるDNAが含まれていますが、
加齢・ストレス・生活習慣・酸化ストレスなどの影響により
DNAが傷ついてしまうことがあります。
●DFIが高い場合に起こりうること
✔受精はするが、その後の発育に影響が出ることがある
✔胚盤胞まで育ちにくい傾向が報告されている
✔流産率との関連が報告されている
つまり、
受精後の胚発育や妊娠経過との関連が報告されている指標です。
●抗酸化力(TAC)とは?
体内では
「酸化(ダメージ)」と「抗酸化(防御)」のバランスが保たれています。
しかし、
✔喫煙
✔睡眠不足
✔ストレス
✔加齢
などにより酸化ストレスが増加すると、
精子DNAがダメージを受けやすくなることが知られています
●抗酸化力が低い状態とは?
ダメージを防ぐ力が弱い状態です。
酸化ストレスは、
DFI上昇に関与する要因の一つと考えられています。
●DFIと抗酸化力はセットで考えることが重要です
この2つは
✔抗酸化力の低下
✔酸化ストレスの増加
✔DNA損傷の蓄積
という流れで関連しています。
そのため当院では、
DFI検査と抗酸化力検査を組み合わせて評価することで、
✔なぜうまくいかないのか
✔何を改善すべきか
をより具体的に考えることができます。
●このような方に検査をおすすめします
✔精液検査は正常だが結果が出ない
✔胚盤胞まで育たない
✔流産を繰り返している
✔男性側の生活習慣が気になる
✔原因不明不妊といわれた
●改善できる可能性があります
DFIや抗酸化力は、
生活習慣の見直しや背景要因への対応によって改善が期待できる場合があります
例えば
✔禁煙
✔睡眠改善
✔体重管理
✔精索静脈瘤などの治療
などが重要です。
抗酸化療法(サプリメントなど)は選択肢の一つですが、有効性には個人差があり、現在も議論があります。
●まとめ
✔精子は「数」だけでなく「質」も重要
✔DFIでDNAの状態を評価
✔抗酸化力でダメージの背景を評価
✔両方を確認することで、より適切な対策が可能
●よくあるご質問(Q&A)
Q1. DFI検査とは何ですか?
DFI検査とは、
精子DNAの損傷(断片化)の程度を数値で評価する検査です。
通常の精液検査では分からない、
精子の“質”を評価することができます。
Q2. 精液検査が正常でも妊娠しないことはありますか?
はい、あります。
精液検査では
数・運動率・形態を評価しますが、
DNAの状態までは評価されません
そのため、見た目が正常でも
受精後の発育に影響が出ることがあります。
Q3. DFIの基準値は何%以上が問題ですか?
DFIの目安は検査方法によって異なりますが、一般的には
✔15%未満:良好
✔15〜25%:やや高値
✔25%以上:高値の目安
とされることが多いです。
ただし、検査法や施設によって基準が異なるため、
結果は個別に評価することが重要です
Q4. DFIや抗酸化力は改善できますか?
はい、改善が期待できる場合があります。
✔禁煙
✔睡眠改善
✔生活習慣の見直し
✔背景疾患への対応
などにより、
数値が改善する可能性があります
Q5. どのような人が検査を受けるべきですか?
以下のような方におすすめです。
✔精液検査は正常だが結果が出ない
✔胚盤胞まで育たない
✔流産を繰り返している
✔原因不明不妊といわれた
“原因が分からない不妊”の評価に有用な検査です
●最後に
「原因が分からない不妊」には、
見えない要因が関係していることがあります
「精液検査は問題ない」と言われた方の中にも、
実は“精子の質”にヒントが隠れていることがあります。
●検査をご検討の方へ
当院は、
東京都プレコンセプションケアに係る検査費等助成事業の登録医療機関です。
また、
令和7年度より、男性の検査項目としてDFI検査が助成対象に追加されました。ただし、DFI検査のみでは助成対象とならず、精液検査とあわせて受ける必要があります。制度の利用には、対象条件などの要件がありますので、詳細は事前にご確認ください。
「何かできることがないか知りたい」
「次の一手を考えたい」
そのようなタイミングで、
一度“精子の質”を確認してみることは有意義な選択肢の一つです
検査の詳細や流れについては、こちらをご参考ください
参考文献
1. Agarwal A, et al.
Sperm DNA fragmentation: a critical assessment of clinical practice guidelines.
World J Mens Health. 2020
2. Esteves SC, et al.
Clinical utility of sperm DNA fragmentation testing: practice recommendations.
Andrologia. 2017
3. European Association of Urology (EAU)
Sexual and Reproductive Health Guidelines. 2024
4. American Urological Association (AUA) / American Society for Reproductive Medicine (ASRM)
Diagnosis and Treatment of Infertility in Men. 2020–2024 update
5. World Health Organization
WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen, 6th ed. 2021
6. Steiner AZ, et al.
The effect of antioxidants on male fertility: a randomized controlled trial.
Fertil Steril. 2020



